2012年5月12日土曜日

チャーリー・ヘイデン / "Liberation Music Orchestra"



ヘイデンが反戦思想から本作を作ったらしいが、正直どうでもよい。
音楽のバックグラウンドを知ることでより深く理解できることに異論はない。この音源が録音されたのは1969年。米国はベトナムを爆撃しまくり、ウッドストックでフェスが開かれた時期だ。こうした時代背景からすれば、ふむふむと納得できる部分はある。
が、最初から知識だけ仕入れることは不要と思う。まず音を聴くべきだ。
反戦ということを音楽が表現し得るのか、という問いはほとんど禅問答であり、正直議論してもあまり意味ない。
ところが、反戦思想から生まれた名曲で云々というディスクレビューなんか読むと、なんとなく理解した気になって他人のどうでもいい意見をさも自分の意見のようにしてしゃべりたくなったりするのだから厄介だ。
まず聴いてみて、そこからどう思うか、やはりこれは反戦の歌なのだと捉えるか、各自で考えればよかろう。
大事なのは音楽自体に押してくるようなパワーがあるかどうか、ではないか。

いろいろグチャグチャ書いてしまったが、ともかくこのオーケストラの音楽は単純にかっこいい。カーラ・ブレイの、混沌の中に美しさが現れるアレンジ。よくもまあこういう曲を書けるものだ。
映画のサントラをそのままバッキングに使っている箇所などは好みの分かれるところだろうが、ナマ楽器の肉声を譜面で統制しつつ、自由にもやらせるというのは実に痺れる。
サックス好きとしては、レッドマンの豪腕を振り回す如きテナーだけでも一聴の価値はある。

2012年5月4日金曜日

ゲイリー・バーツ / "There Goes The Neighborhood!"


ド直球なジャズのアルバム。
選曲もバーツのオリジナルは1曲だけ。スタンダードも数曲含まれており、たしかに斬新さには欠けるが、アルトは芯が通ったパワフルな音色。若干暗めなところはマクリーンに通じるところも感じる。

唯一のオリジナル曲"Racism"(人種差別のことだろう)は超速マイナーブルースだが、バチバチッと吹きまくり、年齢を感じさせない。"Impressions"もやっており、このソロは素晴らしいスピード感。やはりコルトレーンに傾倒しているのだなと思う。
ゲイリー・バーツといえば、エフェクトかけたサックスでブラックジャズを吹くアフロのオッサンというイメージであった。どうでもいいが、昔のジャケ写なんかほとんど具志堅用高である。
そうした時代の演奏と比べて近年は野心がなくてダメだとする見方もあるようだ。
しかし、もともとサックスにエフェクトをかけるのが嫌いな俺としては、これくらいストレートなジャズのほうがスカッと爽快である。
格別に華のある演奏ではないが、手堅さをお勧めしたい一枚だ。