2012年2月4日土曜日

フリージャズ大祭 "インスピレーション&パワー14"

昭和48年(1973年)、2週間にわたって新宿で行われた前衛・実験音楽の祭典。14日間のうち8グループの演奏を編集・収録したドキュメント録音である。



反体制運動の陰りとともに、日本フリージャズの勢いも衰えが見え始めた時期であったらしい。
このままジリ貧になる流れを打開すべく、副島輝人氏の呼びかけによってこのフリージャズ祭りは催された。
収録されたグループは以下の通り。
宮間利之とニュー・ハード
吉沢元治ベースソロ
沖至クインテット
ナウ・ミュージック・アンサンブル
富樫雅彦・佐藤允彦デュオ
高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ
がらん堂
山下洋輔トリオ



日本フリージャズファンは泣いて喜ぶメンバーばかりであるが、だからといって面白いものが生まれるとは限らない。また、実験精神があればいいという単純なものでもない。
即興の要素が強いフリージャズでは特にその傾向がある。

ニューハードの演奏曲は『生霊(いきすだま)』。
サックスセクションを雅楽のように使ったイントロから4ビートになだれ込み、ブラスセクションの獰猛なフォルティッシモが突き刺さる。
朝っぱらから聴く音楽ではないが、不安感を醸し出すビッグバンドサウンドは「実にうまいなあ」と思ってしまうから困る。
さらに本作は、藤川義明のナウ・ミュージック・アンサンブル(NME)の演奏をおさめた、現在入手できる唯一の音源という意味合いもある。
これがまたなんとも微妙な演奏で、ドレミファソラシドをアルトとピアノが吹いていくだけ、というものなのだ。アルトが少しずつ音を外していきドシャメシャッとフリーインプロにつながるのだが、音の外し方も迷いまくりだし、狙いすぎだろが!と言いたくなる。
だが、そのふざけたユーモアがNMEの面白いところだったのかもしれない。現存する音源がこれだけというのは残念というほかない。

「サックスについて書く」というこのブログの趣旨からすると、沖至クインテットの曲『10月革命』における高木元輝のソプラノサックスはぶっ飛んでいる。
沖さんのトランペットは美しい音なのだが、途中から高木さんが「オラオラ」と斬り込み、反応して全員で「オラオラ」とやり始め、しまいにはどっちの音だかわからなくなる。
70年代の日本ジャズ独特のドロドロした生々しいインプロヴィゼーションがたまらない。
アングラ・ムーブメントが起こる土壌は現代にはない。二度と聴くことのできない貴重な記録といえるだろう。

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