2011年3月28日月曜日

ベルグ・ラーセン(メタル) テナーマウスピース

久しぶりにマウスピースを購入した。

モノはラーセンのメタル。
ヴィンテージではなく現行品とのことだが、多少前のものではあるようだ(詳細不明)。

まあ、古けりゃいいってもんでもないので、とりあえず気にしない。音がよけりゃ何だっていいのだ。

オープニングは110、一番高いゼロバッフルである。
※ラーセンは2、1、0と数字が少なくなるほどにバッフルが高くなり、音は明るくなる。

←キャップが透明なプラスチックというのは初めて見た。
付属品はいくらでもとっかえられるので、年代特定の材料にはならないが・・・。







本体は細身だが、息の通り方にストレスは特段感じない。
110というオープニングは広すぎも狭すぎもしない標準的なものだが、ハイバッフルだけあって、フルパワーで吹けばゴリゴリのホンカーサウンドになるし、ピアニッシモでのコントロールも楽だ。
オットーリンクほどではないが、サブトーンも比較的得意のようである。



ラーセンの魅力はなんといってもその

「イモっぽさ」
にある。

これぞジャズテナーの王道たるオットーリンクと違い、独特の直線的かつ無骨な音だ。
ガーデラやポンゾールのようなパワー系ハイエンドマウスピースともまた違う、
「垢抜けない」部分があり、ブルースやソウルのサックスサウンドを支えてきた。

ジャズテナーでもオットーリンクの圧倒的シェアがありながら、確実な人気を集めるマウスピースでもある。

最近はあまり見かけないが、有名プレイヤーも結構使っていた。
一番有名なのはソニー・ロリンズだろう。
他には、ガトー・バルビエリ、デヴィッド・マレイ、ハロルド・ランド、クルセイダーズのウィルトン・フェルダー、古い時代はチャーリー・ヴェンチュラ等々。
タワー・オブ・パワーのテナー奏者レニー・ピケットはゼロバッフルモデルを使っていた。
やはりパワー系テナー奏者が多い。

ただ、男の花道的な音色がウケないのか、日本では今ひとつ人気がないらしい。
たしかにキャラクターが起つので万能とはいかないが、ツボにはまると存在感を主張できる音ともいえるだろう。

私個人の趣味としてはかなり好きな部類なのでオススメしたいのだが・・・・。

関連記事
高瀬アキwithデヴィッド・マレイ/”Blue Monk”
クルセイダーズ /"Scratch"(サックス:ウィルトン・フェルダー)

2011年3月21日月曜日

ペッパー・アダムス(Bs) / "Encounter!"

久々の更新になってしまった・・・。

前回はズート・シムズについて書いたが、本日ご紹介するのはバリトンサックスの雄ペッパー・アダムスとの競演盤"Encounter!"である。

1968年録音。
ペッパー・アダムスといえば、説明不要のブリブリゴリゴリのバリトンだが、クール派テナーのズート・シムズとの競演が異色の作品だ。

アダムスの名盤としては"Critics Choice"や"10 To 4 At Five-Spot"が挙げられることが多いが、

アダムスのスローナンバーが聴きたいならば、

少々渋めの本作を推したい。

何はともあれ、エリントンで有名な"Star Crossed Lovers"が出色の出来栄えだ。
ズートとの2管だが、曲は4分弱と短く、ソロもあまりない。
が、印象的なテーマを通して、二人のプレイヤーの音をじっくりと聴くことができる。
アダムスの演奏は偉大なるエリントン楽団の番頭ハリー・カーネイに捧げたもののようにも聴こえるのだ。

また、アダムスがワンホーンでしっとりと聴かせる"I've Just Seen Her"もこれまた名演である。
バリトンはエッジは立っているが、音の中は柔らかいというような印象で、これがバラッドにバッチリハマるのである。


←なんとも頼りない、公務員のようなツラだが、比類なき強靭な音を出した歴史的バリトン・バッパーである。











メンバーは以下の通り。
Pepper Adams (Bs)
Zoot Sims (Ts)
Tommy Flanagan (P)
Ron Carter (Ba)
Elvin Jones (Ds)

この面子だけでも、聴くのは義務といってよいだろう。

残念なのは、アダムスのバリトンの録音がテナーに比べて小さいことだ。
エルヴィン・ジョーンズのドラムはドカドカうるさく録れているにも関わらずである。
録音環境によるものだろうが、もう少し何とかならんのか。

関連記事
サージ・チャロフ/"Blue Serge"
 サヒブ・シハブ/“Sentiments”
Charles Mingus / "Complete TownHall Concert"
ズート・シムズ/"Soprano Sax"
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2011年3月10日木曜日

ズート・シムズ/"Soprano Sax"

ソプラノサックスをどういう音にしたいのかイメージがつかめず、困っていたときにバンドの先輩に薦められて買ったのがコレ。
テナーマンとして有名なズート・シムズだが、
実はソプラノサックスの名手でもあるのだ。

同じクール派のテナーの中でもスタン・ゲッツのように華のあるタイプではなかったが、レスター・ヤング直系のひたすらスイングしまくるスタイルを貫いた。

本作の録音は1976年。
フュージョンの足音が聴こえてきそうな時代に、50年代の録音かと思うような選曲と演奏を選択したのも、ズートならではといえるのではなかろうか。

1曲目"Someday Sweetheart"はディキシー時代の古い曲。
一緒に口ずさみたくなる親しみやすいテーマがたまらん!
よく聴くと低音域ではサブトーンを吹き、コードトーンで駆け上ったキメの高音域では張りのある音になる。
このあたりの音色のコントロールは見事だ。
4曲目"Bloos For Louise"は愛妻のために書いたズートのオリジナルだそうだが、古いスタイルのブルースをソプラノで吹くというのがかえって新鮮。
ズート・シムズのソプラノは温かみのある音だが、これといった真新しいものはない。
シドニー・ベシェのように強烈なヴィブラートを使うわけでもないし、コルトレーンのような攻撃性もない。
だが、それがポイントなのだとも思う。
ソプラノのような高音域の楽器はコントロールがどうしても難しくなるので、口や喉をリラックスさせた状態で自然な音を出し、楽器を鳴らすという、当たり前のことがより重要になるような気がしてくるのだ。
ソプラノサックスの音源ならこいういうのをオススメしたい。
某ケニーなんぞ聴いたって仕方ない。

関連記事
スタン・ゲッツ最後のステージ/”People Time”

2011年3月2日水曜日

松本英彦さん/"Sleepy"

TBMは若手ばかりでなく、ベテランの演奏も録音し世に出している。
そのひとつが日本テナー界の大御所、スリーピー松本さんによるこの一枚だ。

1976年録音。

松本さんは1926年生まれなので、当時50歳。
ビッグ・フォー時代はブローテナーのような迫力あるプレイがすばらしかったが、本作ではコルトレーンのような音色になっている。
ベテランの演奏なので激渋かと思いきや、実はかなり尖っている。

A面2曲目"You Don't Know What Love Is"では松本さんのフルートが聴けるのだが、
まず驚かされるのは低音の太さだ。
初めて聴いたときはアルトフルートではないかと思ったくらいである。
フルートの低音域を太く豊かな音で吹くというのは実は非常に難しいのだ。

B面1曲目"Right Down Step"は緊張感あふれるコード進行が印象的な急速調の曲。
日野さんのライドシンバルが緊張感にさらに拍車をかけ、松本さんのテナーが全音域を自在に駆け回る。
トリッキーなフレーズも飛び出し、「手に汗握る名演」と呼ぶに相応しい仕上がりになっている。

そして続く2曲目が本アルバムの目玉"My One And Only Love"。
あれこれ書いても仕方ない。
とにかく聴いてみて欲しい。
戦後日本ジャズ史における指折りの名演
であることに疑いの余地なし。

ちなみに、当ブログで既にご紹介した片山広明さんによる演奏と聴き比べると、
「同じスタンダードなのにこうも違うのか!?」
と感じられ、これまた楽しい。
<メンバー>
松本英彦(ts,fl)
市川秀雄(p)
井野信義(b)
日野元彦(ds)