2008年1月22日火曜日

センチな気分になってみるか・・・~バラッド特集~

誰にでもバラードが聴きたくなるときがある。仕事の帰り道、恋人と別れたとき、飲み会の途中にトイレで爆睡してしまった時etc・・・。
というわけで、今回はサックスのバラード名盤を探してみよう。



Phil Woods『Warm Woods』2曲目の「Easy Living」は多くのプレイヤーが演奏しているスタンダードナンバーだが、中でもこれは別格の名演である。「アルト奏者は必ず聴かなければならない!」と叫びたくもなる。
一発録りのアドリブでどうやったらこんなメロディックなフレーズが作れるのか・・・。素晴らしいの一言に尽きる。
他にも「In Your Own Sweet Way」や「Squire’s Parlor」など、名演いっぱい。完成度が極めて高いアルバムである。





Steve Grossman 『Bouncing With Mr. A.T.』何はともあれ聴くべきは「Soul Train」だろう。本家コルトレーンを超える演奏であると思う。カデンツァのようなソロ以外は曲中ではメロディーを淡々と吹くのみでアドリブをほとんどとらないところが憎い!柔らかいが密度の濃い音で、一音一音をすごく丁寧に吹いている(と思われる)。
男は黙ってグロスマン。これである。





Gene Ammons 『Good Bye』
ボステナーの異名をとる名手アモンズの遺作。図らずもGood Byeという題がついてしまったのは偶然であろうか。
本来書くべきは表題曲なんだろうが、ここではあえて2曲目。
なんとポップスの名曲
「Alone Again」
をやっているのだ!
クレジットだけ読むと、ここでギルバート・オサリバンかよ!!と叫びたくなるが、誰もが口ずさむメロディーもアモンズの手にかかるとこんなネチネチとしたジャズに仕上がってしまう。
クサさ丸出しの演奏でもアモンズが吹くと不思議とかっこいいのである。74年死去。



 
David Murray 『Lovers』
そのものズバリ、バラードばっかやってるアルバム。
フリージャズのおっさんだからといってブギョブギョやってるだけと思ったら大間違い。とりあえず「In A Sentimental Mood」から聴いとこう。出だしの一音目から「おおおおーっ!」となること請け合い。私が女だったら間違いなく惚れている。






Hamiet Bluiett 『With Eyes Wide Open』
私が3度の飯より好きなバリトン奏者。この人もフリーやロフトで有名なのだが、なにしろ音が太いもんだから特にスローな曲では圧倒的に強い。2曲目の「Sing Me A Song Everlasting」のメロディーは一度聴いたら忘れられない。やはり低音楽器はバラードが似合う!


なんというか、どれも名盤ばっかでマニアックさが足りなかったか・・・。まあ今回は入門編ということで夜露死苦!

2008年1月2日水曜日

新年一発目:よい音とは何でしょう?

あけましておめでとうございます。
新しい年の始まりとともに、一旦リセットして初心に戻ってみようかと。というわけで、新年一発目は「音」について。

音は個性である。ゆえに、絶対的なただひとつの答えはない。

クラシックの世界ではパーカーの音は好まれないだろうし、例えばフリージャズではわざとヘロヘロの音を出したりすることだってある。
極論をいえば何だっていいのだ。
金属的なバキバキ系だろうが、木管的なやわらかい音だろうが、どうだっていいのである。

ただ、一応の答えというか、

よい音のストライクゾーン

のようなものはあると思う。それは「楽器が鳴ること」と「説得力のある音」の2点に集約される。

※ここからの具体的な話については、私個人の独学によるものではなく、レッスンで教えられた内容の一部抜粋、つまり受け売りである。また、音質等については私の好みが多分に反映されているので、その点ご了承いただきたい。



① 楽器が鳴ること
音を改善するにはアンブッシュアが極めて重要だが、これについては回を改める。
楽器を鳴らす上で重要な他の要素としては、息の量とスピードがあると思う。

楽器というものは一定量以上の息を吹きこまなければ鳴らない。そこで、第1ステップでは息をたくさん入れることに体を慣らすことが重要である。

しかし、息の量を多くするだけではコントロールが利かない。むやみやたらに鳴らそうとすると、いわゆるオーバーブローの状態になってしまうこともある。この傾向は独学で楽器を始めた人に多く、私は今でも悩まされている。

というわけで、第2ステップでは、息のスピードを速めることを考える。


具体的には、マウスピースのボアの中心を、
針の穴を通すようなイメージ
で細く狙ってみる。
この練習を繰り返すことで、楽器を鳴らしつつ余裕を持って演奏することができるようになるはずである。


デイブ・リーブマンの教本。
楽器と身体のコントロールに関しては最も勉強になる本だ。



② 説得力のある音
 科学的に分析したわけではないが、音には「重心」のようなものがあると思う。つまり、高音域、低音域どちらの倍音が多く含まれるかという違いである。
 
そして、低音域の倍音が多く含まれるほうが、倍音の範囲(レンジとでもいうのか)が広がり、結果的に豊かな響きを持つ説得力のある音に近づくのではないかと考えられる。
 
ここでも当然のごとくアンブシュアが大きく影響するが、

息の方向

も重要なポイントである。
具体的には、リードに直接息をぶつけるように吹くのである。垂直に真下に「吹き下げる」イメージがかなり重要らしい。

ためしに、下あごを突き出すようにして(本来は絶対にやるべきでないが)マウスピースの上部に向かって吹き上げるようにして音を出してみよう。
前者と比べて、何か重心が上にあるような、薄っぺらな音が出てはいないだろうか。
音の重心はあくまで低く!


これはジャズ・サックスにおいては
音の基本がサブトーン
であるということとも無関係ではあるまい。これについては佐藤達也氏もどこぞの雑誌に書いていた記憶がある。

サブトーンについてはここでは省略するが、より低音域を強調する方向に説得力ある音の答えがあるのでは、と考えている(というか、そう教えられている)。
以上の内容は、基本的にすべてのサックスに共通して言えることである。 


サブトーンといえば、ベン・ウェブスターは外せないだろう。
楽器が鳴っていると通り越して、ほとんど息の音しか聴こえない(笑)。



繰り返すが、いい音を出すための答えはひとつではない。また、複数の要素が互いに影響し合っており、どこかを改善すればそれで完成というわけにはいかない。
ここに書いたことが正しいか間違っているかは実際に試してみたあと、皆様自身の感覚で判断していただきたい。


※かなり偉そうなことを書いてしまいましたが、「じゃあやってみろ」といわれても困っちゃいます・・・。
毎回レッスンではツッコまれまくってるし。実践してやろうという方はちゃんとした講師の先生に金を払って習いましょう!